#27 健やかなるフェティシズム
今週のひとさら🍑
みんなが好きな柿が大活躍したひとさら
今週は、事前アンケートの「好きなもの」に「柿」と書いてくれたお客さんが17人中8人もいた。柿、美味しいけれど、割と地味なフルーツで(柿を作っている人に失礼だけど…)この間いつも行ってる八百屋のお父ちゃんにその場でホイホイと試食させてもらった富士柿に感動した以外には、私自身は「好き!」までの気持ちを持ったことがなかった。けど今週は、柿が好き!というお客さんがこんなに多かったので、2つのお料理に柿を使うことにした。一つは「焼き芋と柿の味噌クリームチーズ和え」。少し硬めの(私の実家の庭で採れた)柿と、130度で100分間焼いたねっとり甘い焼き芋に、味噌・はちみつ少し・クリームチーズを混ぜたあまじょっぱいクリームがマッチして、皆に大好評だった。ちなみに味噌クリームチーズは混ぜるだけなのでとっても簡単なのだけど、これはあるお客さんから「料理が苦手でもすぐ真似できる美味しいお料理が知りたい」というリクエストがあったので取り入れた。もう一つの柿の入ったお料理はポタージュ!今週のひとさらで一番人気の一品になった。今回初めて柿でポタージュを作ったのだけど、絶対美味しいだろうなと思い、思い切って作ってみた。玉ねぎ・柿・かぼちゃをバターと塩ひとつまみ振りかけてじっくり炒めて、とろとろになったら(玉ねぎも焦げ目がついていい出汁が出るくらいまで炒める)ミキサーにかけて、最後に豆乳で伸ばして味付けは塩麹のみ。今回ポタージュを入れたのは、好きな食べ物に「ポタージュ」と書いてくれたお客さんが一人いたからだったのだけど、周りのお客さんが「ポタージュが一番美味しかった・・・」と言っているのがたくさん聞こえてきて、「ポタージュ好きって書いて、みんなが喜んでくれてるみたいでよかった」とそのお客さんも喜んでくれた☺️
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ごゆるりのひとさらって、おもしろい。みんな一人ひとりがいるから、その一つ一つのお料理が決まっていて、誰かが何か一つ書かなかったら、その一つのお料理はなかったかもしれない。一人ひとりのおかげで、今週もすてきなひとさらができた☺️
-Risa Masaki @risainsea
食と生の民族誌🌞ごゆるりを人類学的に考える
健やかなるフェティシズム
マレーシア生まれの人類学者ロン・リット・ウーンは、ノルウェーでの学生生活で出会った夫を結婚34年目のある日に失う。その喪失の中で足を運んだ自然史博物館の「きのこ講座」をきっかけに、彼女はきのこに魅了される多くの「きのこ愛好家」と出会っていく。彼らきのこ愛好家たちは、食べられるきのことそうでないもの、毒の程度、味などを区別する知識を持つ。五感を総動員してきのこと対話する営みは、次第に彼女の心の喪失感を癒していった。
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ロン・リット・ウーンによる著作『きのこのなぐさめ(原題:The Way Through the Woods : of mushrooms and mourning)』は、一般的にその悲しみを癒す「グリーフ・ケア」の過程を描いたものとして論じられるが、同時にそれは、きのこ愛好家たちの「フェティシズム」を描いたものとしても楽しめる。フェティシズムとは物神や呪物を指すフランス語「フェティッシュ 」から生じた言葉であり、あるものやその一部に対する偏愛を説明する概念だ。特に人類学は、その物質文化(Material culture)研究の中で、ものが人間に及ぼす影響や、それによって喚起される魅惑や幻想、情動などを説明するキーワードとして「フェティシズム」を論じてきた。ちなみに倒錯的な性的嗜好などを指す日本語の「フェチ」は、19世紀後半以降に広がった性科学化の流れの中で生まれてきたものだ。
あらゆるものが、フェティシズムの対象となりうる。ノルウェーのきのこ愛好家たちが向けるきのこへの偏愛も、川原で小石を集める『おじゃる丸』のカズマも、スニーカーやプラモデルのコレクターたちも、そこにはある種のフェティシズムがある。
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ただし、フェティシズムには危うさもある。大量生産される現代の「商品」とそれを循環させる資本主義社会にフェティシズムの側面を見出したのは思想家カール・マルクスだ。この概念がジクムント・フロイトによって精神分析の議論の中で展開されるようになり、現代ではある種の「障害」と結びつけて語られることもある。過度な偏愛は、人間だけでなく社会、さらには過度な消費という形で地球環境をも傷つけかねない。
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健全なフェティシズムは可能だろうか。人類学者デイヴィッド・グレーバーは、私たちが特定のものに自らを凌駕する力があると思い込む時、そこにフェティシズムが生まれるという。それは極めて個人的な偏愛であると同時に、個人を超えてあらゆる存在に影響を及ぼすという意味では社会的な出来事だ。
フェティシズムは悪なのだろうか。過度な偏愛は、他者や事物を傷つけることしかできないのだろうか。「好き嫌い」が語られることの多い食の場で、改めて自分のフェティシズムを見つめ直してみたいと思う。
-Masato Ushimaru @atthegorge
ごゆるりから重要なお知らせ🍳
ごゆるりリピーター・サンクスプライス制度について
先日のニュースレターで食堂ごゆるりの価格改定(2022年12月〜)のお知らせをいたしましたが、このたび、リピーターのお客様向けの特別価格を設定させていただくことにしました。食堂ごゆるりを末長く続けていきたいという強い思いと同時に、今までに何度もきてくださったお客様たちに、またこれまでと同じようにごゆるりしに来て欲しい。その思いで今回の制度を設けることを決定しました。私たちにとって、食堂ごゆるりに一度来てくれた皆さんが、また来てくれることほど嬉しいことはないのです。なぜなら、一人ひとりが「また帰ってきたい」と思えるような、来るといつもなぜかしあわせなきもちになれるような場所でありたいから。これからも、また皆さんが来てくださることを心よりお待ちしております☺️
リピーター価格対象者:各年1~12月の間に3回以上(年に3回以上)ご来店のお客様
リピーター価格:3回目以降のご来店時は毎回500円サービス(2700円(税込)→2200円(税込))
適用方法:会計時に来店回数を確認のうえ適用
お知らせ📮
・食堂ごゆるりの「お昼のごゆるり」について、今週末も少しお席が空いております。ぜひ秋冬の味覚のつまったひとさらを味わいに、またごゆるりしにいらしてください☺️
【食堂ごゆるり11~12月 ご予約空き状況】
11/19(土)→あと3人
11/26(土)→あと3人
12/3(土)→あと2人
12/10(土)→あと5人
12/17(土)→あと13人
12/24(土)→あと15人(年末スペシャル…✨)
・食堂ごゆるりでは「小さな本棚」を公開しています📕ここでは、オーナーRisaやMasatoが影響を受けた本、隔週配信のニュースレター『お米を炊いて』で紹介したものなどをまとめています。ご興味のある方はぜひご覧になってみてください👀